見頃の植物

マンリョウ

シロミノマンリョウ(マンリョウの品種の1つ)
写真:シロミノマンリョウ(マンリョウの品種の1つ)



 学 名:Ardisia crenata
 科 名:ヤブコウジ科
 原産地:日本 中国 台湾 朝鮮半島など
 植栽場所:事務管理棟の玄関前


 マンリョウは関東南部~沖縄の暖地に分布している、成木でも高さ~1mほどの小さな樹木です。初冬(年末)に赤い果実をつけ、よく日本庭園に植栽され正月の飾りに使われており馴染み深い植物です。果実は赤いもののほかに、写真のような白色や黄色の品種もあります。

 マンリョウは、センリョウ(センリョウ科)とともに「万両」「千両」という縁起の良い名前を持ち、分布などは似ていますが、葉の様子と果実の付き方から簡単に見分けることができます。 まず、マンリョウの葉は深緑色でモコモコした波形の縁(鋸歯)をしていてヒョロヒョロと立ち上がった幹の先にかたまってつき、果実は葉よりも幹の下方にたくさん実ります。
 一方、センリョウの葉はやや明るい緑色で、のこぎりの刃のように少し鋭い縁(鋸歯)をしていて、果実は3~4枚の葉が十字のようについた真ん中にイクラのようにこんもりと実ります。


 さて、マンリョウ、センリョウ(万両・千両)という名前はどこからきたのでしょうか。古いお金の単位である「両」が植物の名前としてはじめにあてられていたのは「百両金(百両)」という漢名(中国名)をもつカラタチバナ(ヤブコウジ科)であると考えられています。カラタチバナは赤い実を一房に5~7個つけますが、同科のヤブコウジは2~3個しかつけないことから「十両」という別名を持ちます。
 センリョウは日本に自生していますが、仙境、すなわち蓬莱の国からの仙物として、「仙蓼」という漢名で中国から伝来もしました。用途としては「蓬莱飾り」という新年の祝儀の飾りであったとみられています。ここで、センリョウ(仙蓼)は5~10個とカラタチバナ(百両)よりも多くの果実をつけることから「千両」という字が当てられたと考えられています。そして、センリョウよりも厚く濃い緑色の葉とやや大きな実をつけることからマンリョウ(万両)と名付けられたそうです。
 花の彩が少ない時期のみずみずしい赤い実に、人々が馳せていた想いがうかがえる命名由来ですね。

 ここで一句
マンリョウの めでたい果実に あやかって   単位も実れ 後期満了   (詠み手:速水真澄)


<参考①:和泉 晃一.草木名のはなし http://www.ctb.ne.jp/~imeirou/>  
<参考②:林 将之.葉で見分ける樹木 増補改訂版.p.80.163.2010年(株式会社 小学館)>