トウテイラン
学 名:Veronica ornata
科 名:オオバコ科
原産地:北アジア
植栽場所:芝生斜面
花の紫と葉の銀色が混ざって遠くから見ると、きれいな淡い紫色です。
先端のまだ花が咲いていないところが上に伸びていてかわいく、特徴的です。
一面に咲いていたらきれいだろうなあと思いました。
ベロニカにはたくさん品種があります。ここで紹介するのは、トウテイランです。
漢字では、“洞庭藍”と書きます。よく庭に植えられていたのでしょうか。
葉には細かく柔らかい毛が生えており、触るとなめらかでさらさらしています。
見た目のようにふわふわではなく、しっかりと固い感触です。
花の一つ一つは小さいですが、穂のようにたくさん咲くので華やかです。
4枚の花弁をもつ合弁花で、一つの雌蕊が中心から、二つの雄蕊がその中心を少し避けるように伸びています。
葉の脇からはトマトの脇芽みたいに新たな葉がでてきて、そこがまた新たな穂になっていきます。
穂状の先端にもまだまだ蕾が付いており、花は今の時期、次々と咲くようです。
ベロニカは250種を含む大きな属で、小高木、低木、1・2年草、宿根草など様々です。
草本は主に北半球に分布し、木本はニュージーランドやオーストラリアなど南半球に分布しています。
トウテイランは京都府から鳥取県までの海岸や隠岐島に野生しています。日本産のものだったのですね。
今では園芸店で入手することができます。しかし、環境省のカテゴリでは、絶滅危惧Ⅱ類(VU)だそうです。
絶滅危惧種なのに、園芸店で手に入るなんて不思議です。
ところで、学校には二カ所にトウテイランが植わっています。
芝生斜面に長く植えられているものは京都のもので、
多目的ホール付近の芝生に植えられているものは島根のものだそうです。
似ていますが、少し違います。
島根は全体的に大きく、京都は小振りですが、密に咲いています。
これが地域性なのか、何なのか。是非見比べてみてください。
ベロニカという属名は、聖ベロニカの名が由来となっているといいます。
彼女は1世紀頃エルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女です。
十字架を背負いゴルゴタの丘へ登るイエスの顔に流れる血と汗を拭ったとか。
聖ベロニカと植物のベロニカにどういった関係があるのか気になる、と思っていたところ、
意外な野草が浮上しました。春になったら一面に咲く青い花といえば、オオイヌノフグリですね。
見たら合点のあの野草です。この花の学名はVeronica persicaです。
今ではすっかりおなじみですが、ヨーロッパ原産の帰化植物です。
この身近なベロニカの存在は、今まで知りませんでした。
聖ベロニカとの関係には諸説ありそうで断定はできませんが、
オオイヌノフグリの花をよく見ると、キリストの顔に見えるとか見えないとか・・・。
今回、トウテイランについて調べてみて、日本と欧米の植物での意外なつながりに出会った気がしました。
こんなところで大活躍!
私はたくさん植わっている姿に魅力を感じました。
葉は銀色で、おとぎ話に出てきそうな雰囲気なので、
ウサギのオーナメントなどあしらうとファンタジーの世界が出来上がるのでは。
<参考①:冨野耕治・塚本洋太郎・佐野泰『朝日園芸百科 宿根草編(上)』朝日新聞社(1988.2.20)>
<参考②:塚本洋太郎『原色園芸植物図鑑vol.Ⅲ』保育社(1964.10.10)>
<参考③:林弥栄『日本の野草』山と渓谷社(1983.9.1)>
<参考④:みちくさの名前。https://www.1101.com/michikusa/2009-09-08.html(2015.9.9最終閲覧)>