ニホンズイセン
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写真:ニホンズイセン |
学 名:Narcissus tazetta var. chinensis
科 名:ヒガンバナ科
原産地:地中海沿岸
植栽場所:噴水広場向かいの道路の斜面
スイセンは、漢名の水仙を音読みにしたもので、古く中国を経て日本に入ってきているものです。ニホンズイセンは、本州の関東地方以西、四国、九州の海岸に自生化しています。スイセンは広く栽培され、八重咲き、花被片(花びらに見える写真の白いところ)が黄色いものなどの園芸品種もたくさんあります。有名なものとして、黄色の花が一回り大きいラッパスイセン(花期3~4月)、一茎一花の大カップ水仙とも呼ばれるタイハイスイセン(花期3~4月)、スイセンで唯一赤を持つクチベニスイセン(花期4~6月)があります。
ニホンズイセンを植える際は、日当たりのよい場所に深め(~10センチ)にするとよく、植え方が浅いと花が咲きにくくなることもあります。また、花がらはこまめに摘んだ方がよく、2~3年植えたままでも花は咲いてくれます。花が終わって少し経ったあと堀り上げ・分球し、10月半ばから11月末くらいに定植するとよいでしょう。また、スイセンと一口に言っても種類も多く、それぞれに花期が異なるので、植える際にも注意となります。
多くのスイセンは、個人の庭や公共の場などに植えられ、そのさまざまな花と香りは、見る人をたのしませています。
さて、スイセンの属名は、水に映る自分の姿に恋した美少年Narcissus(ナルキッソス)がスイセンの花に化身したという、ギリシャ神話にちなんでいます。また、ナルキッソスは、ナルシストの語源になった言葉としても知られています。
このギリシャ神話の流れを簡単に説明すると、
美少年の彼は、ある時アプロディーテの贈り物を侮辱する。アプロディーテは怒り、ナルキッソスを愛される相手に所有させることを拒むようにする。彼は女性からだけでなく男性からも愛されており、彼を手に入れられないことに絶望し、自殺するものもいる。森の妖精エーコーが彼に恋をしたが、エーコーはゼウスがヘーラーの監視から逃れるのを歌とおしゃべりで助けたためにヘーラーの怒りをかい、自分では口がきけず、他人の言葉を繰り返すことのみを許されていた。エーコーはナルキッソスの言葉を繰り返す以外、何もできなかったので、ナルキッソスは「退屈だ」としてエーコーを見捨てた。エーコーは悲しみのあまり姿を失い、ただ声だけが残って木霊になった。これを見た神に対する侮辱を罰する神ネメシスは、他人を愛せないナルキッソスが、ただ自分だけを愛するようにする。ある日ナルキッソスが水面を見ると、中に美しい少年がいた。もちろんそれはナルキッソス本人だった。ナルキッソスはひと目で恋に落ちた。そしてそのまま水の中の美少年から離れることができなくなり、やせ細って死んだ。ナルキッソスが死んだあとそこには水仙の花が咲いていた。(wiki参照)
美の神であるアフロディーテも注目した美少年ナルキッソスを、スイセンの美しい花と香りから感じてみるのもよいかもしれません。
ここで一句
あなたへの 言葉にできない かなわぬ恋 スイセン香る バレンタインかな (詠み手:後藤田政春)
<参考①:葉と花で見わける野草 近田文弘 小学館 2010年4月10日>
<参考②:山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 増補改訂新版 林弥栄 山と渓谷社 2013年3月30日>
<参考③:上手な植物選びで今すぐ庭づくり ベランダガーデニング 植物ガイド 久世利郎 グラフィック社 2010年10月25日>